現代社会では様々な健康法が提唱されていますが、その中でも1980年代に一時期大きなブームとなった「粉ミルク健康法」について改めて考察してみましょう。この健康法は、ただの流行りものだったのか、それとも真に効果的な方法なのでしょうか。
粉ミルク健康法とは何か
粉ミルク健康法とは、1980年代に加藤清氏によって提唱された健康法で、赤ちゃん用の粉ミルクを大人が摂取することで様々な健康効果が得られるという考え方に基づいていますこれは、1980年代に発刊された本で、一時期は、かなりのブームになりました 。この方法は「粉ミルク断食」とも呼ばれ、通常の断食療法の一種として位置づけられています。
この健康法の基本的な考え方は以下の通りです:
- 粉ミルクは牛乳とは異なり、人体に有益な栄養素を含む
- 粉ミルクを摂取することで腸内環境が改善され、体内の有害物質が排出される
- 特にがん患者に対して効果があるとされる
千島学説との関連性
粉ミルク健康法の理論的基盤とされるのが「千島学説」です。千島学説とは、生物学者の千島喜久男氏が提唱した学説で千島学説(ちしまがくせつ)とは、生物学者千島喜久男が提唱した赤血球が体細胞の母体であるという説 、現代医学の常識とは異なる見解を示しています。
この学説によれば:
- 血液は骨髄ではなく腸で作られる(腸内造血説)
- がんは細胞分裂で増えるのではなく、病的状態の赤血球から発生する
- 腸内環境を改善することでがんを含む様々な疾患を治療できる
このような理論に基づき、粉ミルク健康法は腸内環境を整え、「血液を浄化する」ことでがんをはじめとする様々な疾患に効果があるとされました。
粉ミルク健康法の実践方法
具体的な実践方法としては、以下のようなアプローチが取られます粉ミルク健康法は朝食を粉ミルクに置き換えて昼食・夕食は普段通りの食事を食べるというとてもシンプルなやり方です
- 0~9ヶ月未満の乳児用粉ミルクを使用する(デキストリンが少ないため)
- 場合によっては「五健草」や「バイエム酵素」を併用する
- 食事の代わりに粉ミルクを摂取する期間を設ける
特にがん治療においては、ガンの唯一の餌であるブドウ糖を摂らずに、他のミネラルなどの栄養素は取り入れて、腐りきった腸を理想的な状態に回復させるという考え方に基づいています。
科学的評価と議論
粉ミルク健康法および千島学説については、様々な議論がなされています。現代医学的な視点からは以下のような点が指摘されています:
- 千島学説は現代医学の知見と多くの点で矛盾している多くの医学的知見と矛盾する説であり、査読のある論文で千島学説を肯定するものは千島学説研究者が執筆したものも含め皆無である
- がんがブドウ糖のみを餌にするという説は科学的に証明されていない
- 血液が腸で作られるという説は、現代の血液学の知見と一致していない
一方で、支持者たちは実際に私は断食や食事療法で病院では投薬治療をし続けるような難治性の病気が治ってしまったという事例を多く知っていたと述べており、実際の治療効果があったとする報告も存在します。
粉ミルク健康法の社会的影響と歴史
粉ミルク健康法は1980年代に大きなブームとなりましたが、その後医師会との対立が起こりました昭和63年2月17日、「粉ミルク断食とマッサージで末期がんを治す」とテレビなどで派手な宣伝をしていた民間健康団体代表らが医師法違反(無資格医業)の疑いで大阪府警に逮捕された。
この事件は小説家の三浦綾子氏も関わり、三浦綾子さんは62歳に直腸癌であと半年の命と宣告されたものが、加藤氏の治療で73歳まで作家活動をされましたという報告もあります。しかし、医療法の関係から粉ミルク健康法の普及活動は制限されることとなりました。
現代における粉ミルク健康法の位置づけ
近年、健康や美容への関心から粉ミルク健康法が再び注目されています最近では大人用の粉ミルクなども増えてきているようですが、粉ミルク健康法を実践する場合使用するのはどこのスーパーでも手に入りやすい赤ちゃん用ミルクでOK という傾向があります。
これは腸内細菌の重要性に関する研究が進む中で、腸内環境を整えるという点に着目されているためでしょう。粉ミルクに含まれる乳糖は善玉菌の餌となり、腸内フローラのバランスを整える可能性があります。
まとめ:自己判断と責任の重要性
粉ミルク健康法は現代医学から見ると科学的根拠に乏しい部分がありますが、一方で実際に効果を感じた人も少なくありません。選択と判断はあくまで個人に委ねられるものです病人にとって、ガンに限らず病気は治りさえすればよいのであり、どんな療法だって、病人の苦痛が除かればその人にとっては最高の療法という視点も重要でしょう。
しかし、病気の治療に関しては医師との相談を優先し、補完的な健康法として考慮することが賢明です。何よりも重要なのは、どんな行動も自己責任でいきましょうという姿勢であり、情報を批判的に検討した上で判断することです。


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